有田芳生参院議員は、2017年7月、ツイッターで元大阪府知事である橋下徹氏のテレビ番組出演についてのツイートを投稿。橋下氏は2017年8月、そのツイートにより名誉が侵害され精神的苦痛を受けたとして500万円の損害賠償を求め提訴し、2018年8月8日、大阪地裁で橋下氏の請求を棄却する判決が出された。
2018年8月27日11時30分から、東京・参議院議員会館で有田議員と代理人弁護士・神原元氏による報告記者会見がおこなわれた。
有田議員が当該のツイートを投稿するには2012年からの経緯があってのことだった。2012年10月26日号『週刊朝日』において、ノンフィクション作家の佐野眞一氏が「ハシシタ 救世主か衆愚の王か」という連載を開始。有田議員がこの連載について「すこぶる面白い」とつぶやいたツイートが橋下氏の目にとまり、「こういう自称インテリが一番たちが悪い。税で歳費を払っているんだよね」などとツイートで攻撃された。
その後、2016年7月、蓮舫参院議員が当時民進党代表選挙にあたり二重国籍の可能性を指摘され、戸籍を一部開示したことを受け、有田議員が「受け入れてはならない重要な人権問題」と寄稿で発表した。それに対し橋下氏が立て続けに批判し、最終的には「有田、早く辞職しろ。自称人権派は有田を責めないのか?」とツイートを投稿。有田議員が「『ザ・ワイド』に一度だけ出演して降板させられた腹いせではないかと思う」と一言ツイートを投稿した。その中にあった「降板」が名誉棄損だとして橋下氏は提訴をおこなった。
有田議員の説明によると、週刊朝日の連載について「橋下氏の出自に関することを書くのは差別である」と当時ツイートで投稿しているが、橋下氏は「面白い」と書いたことだけにとらわれ、2012年以降事あるたびにツイッターで「有田批判」を投稿してきた。有田議員は、「面白いと書いたのは『政治資金パーティーの記述が面白い』ということだった。自身の批判に少しでも関わった人間を許さない、という思いはとてもよくわかるので、橋下氏に会う機会があれば説明するつもりだったが、まったくなく今に至っている」と語った。
そして、有田議員は一審で勝利できた嬉しさも述べたが、自身のケースと1リツイートで橋下徹氏から提訴された岩上安身の例を挙げ、「警告もなくいきなりこういう形で裁判をやることが正しいのか、あらたに議論をしなければならないと思っている」とスラップ性のある提訴に向き合う決意を示した。この「議論」が日本で「反スラップ法」の制定にまで発展することを望みたい。
この度大阪地裁が下した判断は、「表現者が相手を蔑み、感情的又は挑発的な言辞を用いる表現方法をもって相手方を非難する場合には、一定の限度で、相手方から逆に名誉棄損や侮辱にあたるような表現による反論を被る危険性を自ら引き受けているものというべきである」というものだった。
神原弁護士は、アメリカの判例が起源とされるこの考えを「危険の引き受けの法理」として以前から提唱しており、過去にスポーツの分野に適用されたことはあるが、調査した限り名誉棄損の分野で適用されたことは今回が初めてであると解説した。そして、大阪地裁の判断を「極めて妥当」と評価した。