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Channel: 橋下徹 – IWJ Independent Web Journal
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【特別寄稿】下流の都市部のために上流部の水害を容認する!? 「歴代自民党政権の人災」の本質を直視しない橋下徹氏がうそぶく「シビアな治水(河川)行政」――ダム最優先・堤防強化二の次の河川政策が招いた堤防決壊続出の台風19号被害

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 台風19号上陸の翌10月13日放送の「Mr.サンデー」で、維新創設者の橋下徹・元大阪市長から暴言が飛び出した。

 長野市の「千曲川穂保地区」の堤防決壊現場の映像が流れた直後、橋下氏は「治水行政はかなりシビアな判断をやっている」「『都市化されている下流地域に被害が出ないように上流部であえて氾濫させる』という考え方がある」と述べ、下流域のために上流部での被害を容認するという主旨の差別的発言をしたのだ。

▲橋下徹氏(横田一氏提供)

 続いて、「河川の災害に詳しい、災害のスペシャリスト」(テロップ)という布村明彦・中央大学研究開発機構教授(元国交省近畿地方整備局長)が専門家としての見解を求められて「あそこ(堤防決壊地区の下流の狭窄部分)を開くと、(下流の)新潟の方まで水害、洪水が行くということがある」と解説。すると、我が意を得たと言わんばかりに橋下氏が「下流部の方が都市化が進んでいるので、そちらの方が経済的被害が大規模になる」と補足した。

 正直言って唖然とした。「西日本豪雨による堤防決壊で51名の死者を出した真備町の悲劇を忘れてしまったのか」と呆れると同時に、「政権補完勢力を続けてきた維新の創設者らしい発言」だとも感じさせられた。「ダム最優先・堤防強化二の次」の河川政策を続けた安倍政権の職務怠慢に目が向かないような役割を橋下氏が買って出たように見えたからだ。

 千曲川の堤防決壊映像を見て私の脳裏に即座に蘇ったのは、治水行政に詳しい嘉田由紀子・前滋賀県知事が西日本豪雨災害直後に発した指摘だ。去年7月15日のIWJ配信記事「『西日本豪雨災害は歴代自民党政権の人災だ』! 河川政策の専門家で日本初の流域治水条例をつくった嘉田由紀子・前滋賀県知事インタビュー」で、「人災」と批判した理由をこう語っていたのだ。

「水没した真備地区は、ハザードマップ(被害予測地図)で2メートルから5メートルの浸水が予想された危険区域でした。真備地区では高梁川(たかはしがわ)の支流の小田川などで堤防が決壊していますが、この地区の堤防補強が最優先課題だったのです。滋賀県知事になる頃から『矢板(注1)やコンクリートで周りを囲むアーマーレビー工法で鎧型堤防(注2)にして補強すべき』と国に提案して来ましたが、歴代の自民党政権は『鎧型堤防は当てにならない。堤防補強よりもダム建設だ』と言って来た。この優先順位による河川政策が今回の豪雨災害でも大きな被害をもたらした」。

 歴代自民党政権の「ダム最優先」の河川政策を安倍政権も継承し、浸水危険区域での堤防強化を後回しにしてきた結果、西日本豪雨災害で真備町の堤防が決壊、死者51名の大きな被害を招いたというわけだ。

(注1)矢板:
 根切り工事で、掘削によってできる土壁が崩れないように押える為の土留め板。木製・鉄筋コンクリート製・鋼製がある。土木工事の際に用いる鉄板。
(注2) アーマーレビー工法で鎧型堤防:
 アーマーレビーとは鎧(よろい)をかぶった堤防を意味し、洪水が越えても破堤しにくい構造に強化した堤防のこと。堤防のり面をコンクリート・ブロックなどで覆う補強。

 しかし安倍政権は西日本豪雨災害の教訓を活かすことなく、再び同じ失敗を繰り返した。迅速かつ安価な強化工法まで提案をした嘉田氏ら河川災害のスペシャリストの指摘に耳を傾けず、全国の危険性の高い(ハイリスクな)堤防を早急に強化することを怠ったのだ。

 「国民の生命財産を守る」が口癖の安倍首相だが、実際には1年3ヶ月の猶予を最大限活用して各地で緊急堤防強化工事を進めることなく、長野県を含む7県71河川で135ヶ所の堤防が決壊した今回の台風19号襲来を迎えてしまったのだ。安倍政権の職務怠慢が招いた「人災」であることは、西日本豪雨災害の教訓と並べ合わせると、一目瞭然である。


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